日本在宅ケアアライアンスは、「令和7年度厚生労働省老人保健健康増進等事業」として、「都道府県による在宅医療・介護連携推進事業のコーディネーター支援及び研修に関する調査研究事業」(老発0613第2号:令和7年6月13日付)を実施しました。
この調査研究事業の事業報告書を取りまとめましたので、公表いたします。
※本事業は、富士通(株)の全面的な調査協力の下に行いました。
【報告書】令和7年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業
都道府県による在宅医療・介護連携推進事業のコーディネーター支援及び研修に関する調査研究事業
【参考資料】令和7年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業
都道府県による在宅医療・介護連携推進事業のコーディネーター支援及び研修に関する調査研究事業
本事業の総括と今後に向けて
※報告書p.133-134より抜粋
本事業では、関東信越厚生局管内の都県・市町村と連携しながら、主には都県における在宅医療・介護連携推進事業のコーディネーターの支援を目的として、研修会をモデル的に実施してきた。その成果は、これまで述べてきたとおりである。委員会等での議論と検討の過程で、また、実施した研修会における現場からの声(アンケート含む)をとおして、コーディネーターの支援に関して次の4つの課題が明らかになった。
1. コーディネーターは、地域において(行政・専門職含む)十分認知されていない
在宅医療・介護連携推進事業については、市町村職員とコーディネーターが両輪となり、地域の医療・介護職のつなぎ役・調整を担い、地域包括ケア実現に向けてこれまで活動を積み重ねてきた。先進的なコーディネーターによる、各種の研修や啓発活動も進んできている。しかしながら、概して地域におけるコーディネーター及びその業務・活動に関する認識は、その重要性に比して非常に乏しいものに留まっている。各地域において、医療・介護の連携調整等のニーズが高まっているにもかかわらず、それを担う存在となるべき連携コーディネーターへの認知は低い。このことが、地域における連携調整等の課題解決を遅らせている一因となっていると考えられた。
2. コーディネーターの機能・役割が明確ではない:とりわけ在宅医療・在宅ケアの基礎的な視点の必要性
上述したコーディネーターの認知不足を引き起こしている主たる原因のひとつとして、コーディネーターの担うべき役割ないしは機能が、明確ではないことが挙げられる。令和7年に、厚生労働省から『在宅医療・介護連携の推進に係るコーディネーターの活用ハンドブック』が公開された。このハンドブックには、コーディネーターに求められる能力や知識等が掲載され、その内容としては、相談対応を基本業務とし、加えて必要に応じて市町村等と連携し、地域課題・必要な施策などを検討するとしている。そのために必要な能力として、関係者(自治体、医療、介護含む)の認識把握、合意形成、橋渡しの3つの事項が記載されている。これらの能力はコーディネーターの携わる連携調整に直接関わるものであるが、一方で、実際に在宅医療・介護に携わる各専門職の抱えている現実・具体的な課題、何よりも、在宅医療及び介護の複合ニーズを抱えて暮らす当事者の方が抱えている暮らしの課題については、現行のハンドブックの記述内容ではカバーされていない。すなわち、「どのように」連携調整するかの原則は示されているが、「何のために」連携調整するかについて、その原則が示されていないといえる。
本事業の特色として、コーディネーター研修のプログラムに、「在宅医療・在宅ケアの基礎的な視点」を意識的に盛り込んだ。在宅医療の制度面の知識のみならず、在宅医療・在宅ケアの原点である「その人の生活のとらえ方」「その人らしく生きるとは何か」といった生活・人生の視点、及びそれを踏まえた生きがい支援の視点を強調し、その視点を組み入れた具体的な連携調整を目指す研修プログラムにより研修を実施した。参加者の評価は、概ね好意的・積極的であった。
3. コーディネーター同士の横のネットワーク:プラットフォームの構築の必要性
新潟県・群馬県・埼玉県・新潟市等では、コーディネーターの横のネットワークづくりと、情報交換や研修の場づくりの試みが報告された[2]。また、茨城県においてコーディネーターを対象とした試行的研修を実施し、概ね肯定的な評価を得た。これらの事業を経て、コーディネーター同士の横のネットワークを促進するための、プラットフォームの構築が今後重要との認識がなされた。
4. コーディネーターが、地域で機能することにより、医療・介護の少ない人的資源が効果的に活用されうる
コーディネーターが、在宅医療・介護の基礎的・現実的な問題意識を踏まえた情報共有・連携調整の役割を担うことで、地域におけるコーディネーターの存在感が認識され、在宅医療・介護に関わる実際の調整に力を発揮することで、医療・介護に関わる人的資源がもっとも効果的に活用され、あるべき地域包括ケアが実現すると考えられる。そうした役割・機能を強化するためにも、「3」で述べたプラットフォームの構築が重要なものとなる。
以上の調査結果を踏まえて、以下の3点を提言としたい。
①本事業におけるコーディネーターを在宅医療・在宅介護双方の視点を踏まえた個別的調整も行える総合的な在宅ケアコーディネータ―(仮称)として位置づけ、横断的な調整権限を持つ専門職であることを明確化するとともに、広く行政及び社会に周知していく。
②2040年を視野に、在宅ケアの目指す理念を明らかにし、適切な在宅医療・介護の推進に向けた在宅ケアコーディネータ―(仮称)の役割を、さらに明確化していく。
③総合的な在宅ケアのコーディネーターとしての新たな人材育成のために、相互研鑽の基盤の整備、多職種による支援体制、そのためのプラットフォームの構築を国、関係団体が協力して図っていく。
今後、これらの課題と提言を基本として、さらなるコーディネーター支援を行える体勢の構築を図るとともに、都道府県・市区町村においても支援体制の構築が進められることを期待したい。
